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艇速の違いによる接水面積と抵抗の関係の変化について [ヨットデザイン]

久々に記事を投稿しますふなだいくです。


レーサーの皆さんは、愛艇のボートスピードについてとても敏感であると思いますが、艇速アップの為に色々努力されておられるかと思います。

しかし、実際レースとなれば船体自体をどうこうする訳にはいきませんから、その時与えられたものの範囲で艇速アップを心がける訳です。
ハルが受ける抵抗を減らすというのは、レーサーにとって大きな課題かと思います。

レース経験のある方は誰もが通った道かと思いますが、艇の姿勢をかえたりと色々試されたと思います。
私自身も下級生時代は先輩に言われるがまま、前に乗ったり後に乗ったり、ヒールさせたりさせなかったりしておりました。
上級生になってからも、今ひとつ理屈は理解していませんでしたが、ボートスピードがあがる状態がある事は何となく感じていました。例えば微風時全般や中風以下の平水面でのクローズホールド(スナイプで言うとクルーがオンデッキになるぐらいでしょうか。だたしこれは私の場合つまり重量級ですので、軽いペアの場合はもう少し風が強い状態まで当てはまるかもしれません。)で、艇体を少しバウダウンのトリム(船体の前後の浮き具合)にして、接水面積を減らすなど。

当時は感覚でスピードが増えた減ったと感じておりましたが、この世界に入ってヨットについて勉強するうちに、色々と分ってきました。

今日はこのボートスピードの遅い時に接水面積を減らす効果についてお話したいと思います。


まずヨットがセーリング中に受ける抵抗は色々ありますが、ハルが水流からうける抵抗は大きく分けて二つあります。(正確にはもう少し種類がありますが)造波抵抗と摩擦抵抗です。

前者はヨットが水の上を航行する時に船首と船尾から下の図のように、上から見ると三角形の形をした波ができる時に発生する抵抗です。

造波抵抗














C.A. Marchaj

Sailing Theory and Practiceより引用しました。クリックで拡大します。


この抵抗は船体の形状に深く依存します。今回の本題からは少しずれるので、この造波抵抗は船体水線長の平方根が一秒当たりに艇が進む距離(艇速)に等しくなる辺りから急激に増加するという事だけ心に留めておいて下さい。

摩擦抵抗の方ですが、これは読んで字の如く、船体表面と水流が接する部分に発生する摩擦による抵抗です。
こちらは接水面積に比例します。つまりこれを減らす事は艇速アップに直結する訳です。
下の図は直立状態でのユNew York 32ユというヨットの抵抗を縦軸に、艇速を横軸に表したものです。


抵抗割合












C.A. Marchaj
Sailing Theory and Practiceより引用しました。
クリックで拡大します。



引用した本が結構な古典ですので、単位がメーター法ではなくインペリアルですが、同様の計算式が適応出来ますのでご容赦を。

実線がトータルの抵抗(Total Resist.)を示し、点線が摩擦抵抗(Friction)の分だけを示しています。そしてその差が造波抵抗(Wave making)になります。

さて、この図の一番下にユSpeed length ratioユと軸がありますが、これが先程造波抵抗のところでお話しした船体水線長の平方根と艇速の割合を示しています。

この割合が1.0の辺りから急激に造波抵抗が増加しており、それによって全体の抵抗に占める摩擦抵抗の割合が減少しているのがお分かりかと思います。

つまり、このポイント以下の艇速では接水面積を減らす事はとても効果的に全体の抵抗を減らす事になる訳です。

逆 にもっと艇速の早い領域では、節水面積を減らす事は艇速アップに対しあまり効果がなく、それ以外に意識を注ぐべき事柄、例えばディンギーやレーサーヨット であれば逆にスタン近辺の平らなハル形状によって、プレーニング状態にもっていくとか、クローズホールドであれば波によって受ける船体のピッチングを減ら すとかでしょうか。


次回セーリングにいかれる際は、接水面積と艇速の関係に少しだけ意識を注いで乗ってみて下さい。このような理屈を意識しながらセーリングすると、もしかしたら艇速アップにつながるかもしれませんよ。


ふなだいく


STIX(2) [ヨットデザイン]

前回の続きです。


3, Inversion Recovery factor (FIR):完沈状態(ヒール角180°)からの自己復元性係数

このファクターの計算式は、船体重量が40t未満の場合と40t以上で変わってきます。
船体重量が40t未満の場合 FIR = φv
/ (125 - m/1600) 
船体重量が40t以上の場合 FIR = φv / 100
ただしφvは、復元力消失角、mは船体重量(kg)、FIRの値は0.4より大きく1.5未満でなければならない。

このファクターは、ヨットが完沈状態(ヒール角180°)になってしまった状態から、元の状態に復元するしやすさを判定します。復元しやすい方がより安全であると判定します。
そしてその基準は復元力消失角にあります。復元力消失角と言いますのは、ヨットがその角度以上ヒールすると、負の復元力つまりヨットを上下反対の位置、完沈状態にもっていこうとする力が働くヒール角のことです。下の図参照


AoVS


 

 






ですから、この復元力消失角が大きければ大きい程、完沈状態になりにくいし、完沈状態から元の状態にもどる可能性が大きくなります。

さて、ではどれ程の復元力消失角をもっていればそのヨットが安全であるかの基準ですが、前回も紹介しましたように、それぞれのファクターの値が『1』であれば、そのヨットのデザインは、特に『安全である』訳でもなくまた『安全でない』訳でもない、つまりニュートラルなデザインである事を意味しますから、これが一つの基準と考えて差し支えないでしょう。ここでもう一度計算式をみて頂きたいのですが、このファクターでは船体重量が40t未満の場合と40t以上の場合で計算式が異なります。

40t以上の船体重量をもつヨットの場合、値『1』を得る為には、復元力消失角φvが100°以上であれば良い事になります。

逆に、40t未満のヨットの場合、船体重量が軽くなればなるほど、値『1』を得る為には、復元力消失角φvが大きくなければなりません。

例えば、5tのヨットの場合
FIR = φv / (125 - 5000/1600) = φv /121.875
となり、値『1』を得る為には、復元力消失角φvが約122°以上でなければなりません。この角度が船体重量5tのヨットにおいての基準になります。

つまり、復元力消失角が122°以下であれば、値は『1』を下回り、最終的なSTIX(復元力指標)に不利な影響を及ぼします。また逆に122°以上であれば、値は『1』を上回り、STIXに有利に働きます。
船体重量が大きい船が優遇されている理由は、統計が示すように大きいヨットの復元性に関する事故が船体重量が小さいものより起こりにくいからです。

4, Knockdown Recovery factor(FKR):半沈状態(ヒール角90°)からの自己復元性係数

こちらのファクターの計算式は、より複雑ですので、まず概要の説明から。
このファクターは、半沈状態(ヒール角90°)から如何に早く元の状態に復元するかを判定します。
もちろん、早く復元する方がより安全であると言えます。

さて、計算式ですが、まずは補助係数FRを計算するところから始まります。
FR = GZ90 x m / (2 x AS x HCE)
GZ90はヒール角90°の時の復元力(正確には復元力てこの長さ。復元力曲線より得られる。)、ASはセール面積(平方メートル)、mは船体重量(kg)、HCEはセールの効果(圧力)中心の水線からの高さ(メートル)。
補助係数FRの分子"GZ90 x m"はヒール角90°の時のライティング(復元)モーメントを表現し、分母"2 x AS x HCE"はヒールモーメント(船を横倒しにする力)表現しています。つまり、FRの値が『1』の時二つのモーメントは釣り合い、外的な力が加わらない限りヨットは90°横倒しの状態で安定します。

FRの値が『1』より大きくなればなるほど、加速度的により早く復元します。
そしてもちろんFRの値がより大きいほど、FKRの値に有利に働きます。
FKR:半沈状態(ヒール角90°)からの自己復元性係数はこの補助係数FRの値が1.5以上か未満か、また復元力消失角φvが90°未満かによって異なり、3パターンの計算式が適応されます。

FRが1.5以上の場合 FKR = 0.875 + 0.0833 x FR
FRが1.5未満の場合 FKR = 0.5 + 0.333 x FR
φvが90°未満の場合  FKR = 0.5

まずこの式から分かる事は、FRの値が1.5の時、FKRの値がおよそ1となることから、ここが一つの安全の基準となる事がわかります。
先ほど『Rの値がより大きいほど、FKRの値に有利に働く』言いました。
しかし、上の式と『にらめっこ』していても、どのように有利なのかあまり実感がわきませんので、FRの値を横軸にFKRの値を縦軸にとってグラフにしてみました。


FKR









なるほど。FRの値が『1.5』(つまりFKRの値が『1』)より、小さい場合、FKRの値がより大きな傾きで減少していくのがわかります。

ということは、言い換えるとFRの値が『1.5』以上である事が、ノックダウンからの復元において重要であるということですね。

では、ここでもう一度FRの計算式を見てみましょう。

FR = GZ90 x m / (2 x AS x HCE)

GZ90はヒール角90°の時の復元力(正確には復元力てこの長さ。復元力曲線より得られる。)、ASはセール面積(平方メートル)、mは船体重量(kg)、HCEはセールの効果(圧力)中心の水線からの高さ(メートル)。

FRが大きくなる為には、
A), 計算式の分子が大きくなる
B), 計算式の分母が小さくなる
の二通りが考えられます。

つまり言い換えるとそれぞれ
A)ヒール角が90°の時の復元力を高くするもしくは船体重量を重くする。
B)セール面積を小さくするもしくはセールの効果(圧力)中心をさげてやる。
となります。

以前にも述べましたが、私個人はロングキールでクラシックな外観をもったヨットが大好きです。これを見てみると、ロングキールのガフリグ艇などはFRの値が高く出そうですね。

皆さんが、もし海に出ている時に状況が非常に悪くなって来てノックダウンが起こる可能性がでてきたときに、このFRの値を上げてやれば、たとえノックダウンしたとしても、より損害を少なく復元できる事になりますね。これは、当然皆さんご存知で実際に経験されている『A),荷物を低い位置に置き、B),セールをリーフする。』事です。


出来るだけ簡単に紹介しているつもりですが、未熟な文章ですので分かりにくい事があるかと思います。
もし何かご質問等がありましたら、メールもしくはコメント欄にてお尋ね下さい。

ふなだいく

STIX [ヨットデザイン]

9月10日の記事『デザインカテゴリー』で話題にしましたISO 12217-2 Small craft - Stability and buoyancy assessment and categorisation(小型船舶ー復元力と浮力評価と分類)では、各カテゴリーごとに決められた基準があり、それらをパスして初めて、そのカテゴリーのヨットということで流通させる事ができます。
 
その基準の一つにSTIX(Stability Index:復元力指標)と呼ばれるものがあります。
本日はそれを紹介したいと思います。
随所に計算式が出てまいりますが、それらを読み飛ばして頂いても概要は掴んでいただけるかと思います。

STIX(復元力指標)はモノハルヨットの基本的なディメンションと静復元力曲線から得られる値によって導き出されます。

STIXには、次の8つのファクターがありそれぞれ異なった角度から安全性の度合いを評価し、最終的にそれぞれのファクターの値を計算式に代入し、求められた値によってカテゴリー分けが行われます。
それぞれの日本語訳は私が勝手に解釈したものですので、もしかすると日本語で正式な呼称があるかもしれません。
 
1, Base Length factor(LBS):基本長さ係数
2, Dynamic Stability factor(FDS):動的復元力係数
3, Inversion Recovery factor(FIR):完沈状態(ヒール角180°)からの自己復元性係数
4, Knockdown Recovery factor(FKR):半沈状態(ヒール角90°)からの自己復元性係数
5, Displacement-length factor(FDL):排水量/長さ比係数
6, Beam-desplacement factor(FBD):幅/排水量比係数
7, Wind Moment factor(FWM):風によるモーメント係数
8, Downflooding factor(FDF):水流入機会係数
 
 
STIX計算式
STIX = (7+2.25LBS)(FDS x FIR x FKR x FDL x FBD x FWM x FDF)^0.5 + δ 
※δは、艇が不沈であるか否かにより値が決まる。不沈であればδ=5、それ以外はδ=0
 
それぞれのファクターは計算式から成り、次に紹介しますLBS(Base Length factor)を除きそこから導き出された値が『1』の場合は、そのファクターは特に安全であるわけでもなくまた安全でない訳でもない、つまりニュートラルなデザインである事を意味します。値が高ければ高いほど、そのヨットは安全であると評価されます。
各ファクターの特徴と計算式を紹介したいのですが、長くなりそうなので何回かにわけて説明させて下さい。
 
1, Base Length factor (LBS):基本長さ係数
LBS = (船体長+ 2x水線長)/3   このファクターは完全にヨットの長さに依存します。 艇の全長および水線長が長いほど、値の高いSTIXが導き出されます。つまり、より安全であると評価されます。 その最大の理由は、ヨットの事故に深く関わる「波の大きさと船の大きさの関係」にあります。 ヨットのサイズが大きくなれば、それに比べて波は相対的に小さくなります。 つまり、ヨットのサイズが大きいほど波による危険は軽減されるということになります。 計算式をみて頂けるとお分かりかと思いますが、このファクターLBSは、他の7つのファクターと比べて格段にSTIXの値に影響を及ぼします。   2, Dynamic Stability factor(FDS):動的復元力係数

FDS = AGZ / (15.81 x √船体長)

下の図が示すようにAGZは、復元力曲線の正の部分の面積の一部(水流入角もしくは復元力消失角どちらか小さい方の角度まで。バラストを有するヨットでは、ほとんどの場合が水流入角の方が小さい。)
ただし、FDSは、0.5より大きく1.5未満でなければならない。


AGZ









復元力曲線については詳しくは以前の記事「ロングキール艇」をご参照ください。

このファクターは、ヨットが復元性もしくは海水流入の危険性に関して致命的な角度まで傾くのに必要な力の強さ(正確には仕事量の多さ)を相対的に判定します。

当然、必要な力(仕事量)が多くなるほどこのファクターにおいては安全なヨットと判定されます。  この値が高いということは、風によるものであれ、波によるものであれヨットが横倒しになり、危険な状態に陥る機会がより少ないということになります。 このファクターにおいては、軽排水量艇が有利な値を得られやすいようです。 といいますのも、ロングキール艇などの重排水量艇と比べて、軽排水量艇は同じ船体長であってもその船形のために、復元力の最大値がより小さい角度でより高い数値であらわれ、また水流入角も大きめの値になり、結果としてAGZ(計算式の分子)の値が高くなるからです。

 補足:水流入角とは、ヨットの場合下の図のように、コンパニオンウェイの上端が水につかるヒール角のこと。


Downflood











平均的な水流入角は重排水量艇では、概ね110度。軽排水では120度

 

次回は、Knockdown Recovery factor(FKR):半沈状態(ヒール角90°)からの自己復元性係数とInversion Recovery factor(FIR):完沈状態(ヒール角180°)からの自己復元性係数の予定です。

ふなだいく


ガフカッターとバミューダン [ヨットデザイン]

先日、本桟橋を歩いていました時に、


24 gaff


 


 


 


 


 

こちら↑、Cornish Crabber 24' Gaffのバウスプリットが

24 sloop













 

 

 

 

 

同じ艇種のCornish Crabber 24' Bermuda↑の物より明らかに長い事に気づきました。

そこで、事務所に戻ってきて両艇のプラン図を見てみました。

cornish sloopcornish gaff










  

Gaffリグはバウスプリットが長いだけでなく、メインセールのクリュー(後端)も少し後ろよりです。

Cornish Crabber 24' Gaffはイギリスの伝統的な蟹とり漁船のラインがモデルになっており、リグなども当時の物を再現する形でデザインされています。

確かに古い時代のガフリグの船をみてみますと、バウスプリットにカッターリグ、ケッチやヨールもしくはスクーナー、一本マストでもブームはトランサムより後方に飛び出していて、船の前後方向にセール面積を広げていったようです。
当時の状況を考えますと、材料的な制約で一本物で十分な強度をもつ長いマストを作るのは難しかったというのもあるでしょうが、ガフカッターなどのリグは作業船や輸送船に多くみられたというのは、他にも理由があるように思い、少し考察してみました。

対象的に現代のヨットはアスペクト比の高いリグつまり高いマストで上下に長いセールを使用しています。この方が効率、つまり発生する揚力に対して抵抗が少ない事が判明しているからです。
 

3ea218bb.jpg

引用1"Sailing Theory and Prctice" C A Marchajより
注:図中のセールはセール面積はすべて同じでアスペクト比が異なる

このグラフは縦軸にセールが風に対して垂直方向に発生する力(揚力)、横軸に風が向かう方向に平行に発生する力(抵抗)を表し、グラフ左下のαはセールからみた風の進入角(ブームと見かけの風との間の角度)です。風の進入方向は図にあるように横軸の左から縦軸に対して垂直になっています。
セールの揚力と抵抗は合成され、再び船を前進させる力(ドライビングフォース)と船をヒールさせる力(ヒーリングフォース)に分解できます。船の進行方向は図のようにクローズホールドです。この場合、ドライビングフォースは船の進行方向と平行でその方向にのびる矢印で示されており、ヒーリングフォースは船の進行方向に対して垂直にのびる矢印で表されています。
この図から分かりますように、クローズホールドでは圧倒的にアスペクト比の高いセールが有利ですね。ガフリグと比べると約2.5倍にもなります。

ただ、このアスペクト比の高いセールがすべての状況において有利という訳ではなく、見かけの風に対してのヘディング角によっては、ガフリグのようなアスペクト比の小さなセールの方がドライビングフォース(前に進む力)が大きい場合もあります。下の図にそれが示されています。

2















 引用2"Sailing Theory and Prctice" C A Marchajより
縦軸はドライビングフォース、横軸は見かけの風に対してのヘディング角

図から見て取れますように、ガフリグ(アスペクト比AR=1)見かけの風が70度以上ではAR=6のセールよりもドライビングフォースが大きくなっています。
整理しますとアスペクト比の高いセールはクローズホールドなど見かけの風と進行方向の角度が小さい時は有利で、逆にその角度が大きい時はガフなどのアスペクト比の低いセールがより多くのドライビングフォースを生み出すという事でした。

先ほどからたびたび登場します『見かけの風』について、少し補足させて下さい。
見かけの風というのは文字通り、航行中の船上で観測される風の方向や速度であったりしますが、それらは実際の風と船の艇速を合成したものです。
という事は、艇速が上がりますと見かけの風は強くなりまた方向も船首側にまわったように観測されます。つまり同じのぼり角度で帆走していても、速い船は遅い船より強くまた前に回ったみかけの風の中を帆走しなければなりません。

ここでもう一度、今日の話題、ガフカッターはより長いバウスプリットで前後にセール面積をとり、スループは高いマストで上下にセール面積をとっているという話題に戻ります。

昔の作業船などはガフカッターリグの船が多くみられるという話でしたが、こういった船はもちろん重排水量でしょうから最高速度も限られたでしょうし、今のレーサーみたいにがんがん上る事は皆無で、実際アビームやリーチングがほとんどだったでしょう。という事は、それらの船に求められたのは、安全性といかに多くの荷物を積んで帆走できるかであったのではないでしょうか?つまり、必要なのは大きいドライビングフォースと少ないヒールモーメントという事になります。

aspect

引用3"Sailing Theory and Prctice" C A Marchajより
(β-λ)は見かけの風に対してのヘディング角
縦軸はドライビングフォース(左にいくほど大きい事に注意)
横軸はヒールモーメント
(β-λ)=27.5度よりも大きい場合で、セールが前後に長いリグModel Cの方がドライビングフォースも大きくそしてヒールモーメントも小さい事が分かります。つまり作業船に求められる条件に合致しています。
昔の人はこの事を知っていたのかどうか分かりませんが、実証的に認知されていたからこそこのタイプの船が多くみられたのではないでしょうか?

Cornish Crabberに興味を持って頂ける方でも、だいたいの方がのぼり角度について言及され気にかけられますが、風上に向かって帆走するレグが重要なレースに定期的に出られる方以外は特に気にする必要もないと思います。私の場合どうせ帆走するなら気持ちいい角度で楽にセーリングを楽しみたいですね。

ふなだいく

追記:記事内の引用1と3が反対でしたので、入れ替えました。


デザインカテゴリー [ヨットデザイン]

皆さんがヨットを購入させる時は、どんな事を基準に艇種を選ばれますか?
基準はいろいろある(外観デザイン、帆走性能、居住性、コストや安全性)でしょうが、しばしばそれらの基準は互いに相反するものである事があります。たとえば、ハイエンドのレーサー艇などは帆走性能を重視し軽量化をはかり安全マージンを低くとらざるを得ないなど。
そんな中でどんな基準で艇を選ばれるかは、オーナーがそのヨットでどのような事がしたいか(目的)によって違ってくるでしょう。週末、家族でセーリングを楽しみ、年に数回は泊まりがけでクルージングにいきたい。クラブレースとレース後のマリーナでみんなとわいわいお酒を楽しみたい。シングルハンドで日本一周、はては大海原をこえて冒険をしてみたい。このように目的はいろいろありますが、その目的を満たすための数ある基準の中でも外観や居住性、コストなどはオーナー自身の目でみて判断して頂けますが、その艇の安全性とくにスタビリティー(復元力)については、なかなかオーナーご自身で判断できかねるのではないでしょうか?

そんな中で目にされた方もおられるかと思いますが、ヨーロッパで流通するヨットにはデザインカテゴリーA~Dという表記がされています。これは欧州議会が統括し発効したEuropean Directive 94/25/ECの中で定められる基準に従い船舶(全長2.5m~24m)をその用途に応じて分類(A~D)しています。しかし、この規範は復元力を含む耐航性能を評価する明確な基準は記されていません。その基準となるのがセーリングヨット(全長6m以上)の場合、ISO(国際標準化機構)が定めるISO12217-2 Small craft – Stability and buoyancy assessment and categorization(小型船舶―復元力と浮力評価と分類)です。
この中では、復元力を含む耐航性の評価の方法が記されており、カテゴリー別にクリアすべき数値が明確に記されています。その中でも本日は、日本の小型船舶検査機構が定める小型帆船特殊基準にもありますAngle of varnishing stability(復元力消失角:船体が正の復元力をもつ限度角。これを超えると船体は上下裏返った状態に安定しようとする力が働く。つまり、この角度が小さいと転覆しやすく、また一度完全に転覆してしまった時に元の状態に復元する可能性が低くなる。)について、両者がどのように定めているのか紹介致します。
まずはISOの方ですが、カテゴリーAとBについては、復元力消失角と共に最低の重量排水量も決められていて以下のようになっております。


requirement

 





カテゴリーAとBそれぞれの最小要求排水量しかない船、つまり3トンと1.5トンの船では復元力消失角はそれぞれ124度と122.5度となり、排水量が大きくなるにしたがって要求される復元力消失角は小さくなります。それらはそれぞれ100度と95度以上でなければなりません。カテゴリーAでは15トン以上、Bでは6トン以上の船がこれにあたります。
一方小型船舶検査機構が定める小型帆船特殊基準[Ⅱ] 13.復元力の項目では沿海区域以上(つまり遠洋、近海、沿海区域)は90度、平水区域及び小型帆船沿岸区域等は80度以上の復元力消失角が要求されています。
以上二つの基準を比べますと、ISOで定められたカテゴリーCのヨットは日本の基準ですと最低でも沿海区域を航行できる船であるといえます。しかし、カテゴリーCの船が日本の沿海以上の区域を航行可能であるからといって、その船で遠洋区域つまり外洋も大丈夫とはいきません。そこでISOのカテゴリーA~Dの定義より、日本の航行区域に当てはめるとしたらどのようになるのか、ISOで記述されています各カテゴリーの定義をISO12217-2の8.2 Meaning of the design categoriesより引用し私なりに翻訳させて頂きます。

“A boat given design category A is considered to be designed to operate in winds of Beaufort force 10 or less and the associated wave heights, and to survive in more severe conditions. Such condition may be encountered on extended voyages, for example across oceans, or inshore when unsheltered from the wind and waves for several hundred nautical miles. Winds are assumed to gust to 28m/s.”
訳:デザインカテゴリーAを与えられる船はビューフォート風力10もしくはそれ以下の風とそれに伴う波の中航行でき、それよりもさらに厳しい状況でも耐え抜く事ができるように設計されているものとみなされる。大洋横断などの長期にわたる航海や数百海里以上風や波を遮るものがない沿岸でも、このような状況に遭遇する事があるかもしれません。風速28m/sまでが仮定される状況です。

“A boat given category B is considered to be designed for waves of up to 4m significant height and a wind of Beaufort force 8 or less. Such condition may be encountered on offshore voyages of sufficient length or on coasts where shelter may not be immediately available. Such conditions may also be experienced on inland seas of sufficient size for the wave height to be generated. Winds are assumed to gust to 21m/s.”
訳:デザインカテゴリーBを与えられる船は最大でビューフォート風力8、有効波高4mの波の中航行できるように設計されているものとみなされる。近海においてある程度の期間の航海や近くに避難できる場所が無い沿岸でも、このような状況に遭遇する事があるかもしれません。また、十分な広さのある内海でもこの程度の波の高さを経験する可能性があるでしょう。風速21m/sまでが仮定される状況です。

“A boat given category C is considered to be designed for waves up to 2m significant height and a typical steady wind force of Beaufort force 6 or less. Such condition may be encountered on exposed inland waters, in estuaries, and in coastal waters in moderate weather conditions. Winds are assumed to gust to 17m/s.”
訳:デザインカテゴリーCを与えられる船はビューフォート風力6、有効波高2mの波の中航行できるように設計されているものとみなされる。開けた内海や入り江そしてそれほど悪くない天候状況の沿岸でも、このような状況に遭遇する事があるかもしれません。風速17m/sまでが仮定される状況です。

“A boat given category D is considered to be designed for occasional waves up to 0.5m significant height and a typical steady wind force of Beaufort force 4 or less. Such condition may be encountered on sheltered inland waters, and in coastal waters in fine weather conditions. Winds are assumed to gust to 13m/s.”
訳:デザインカテゴリーDを与えられる船はビューフォート風力4、有効波高0.5mの波の中航行できるように設計されているものとみなされる。閉じた内海や天候状況の良い沿岸でも、このような状況に遭遇する事があるかもしれません。風速13m/sまでが仮定される状況です。

この定義と要求される復元力消失角から各デザインカテゴリーを日本の航行区域にあてはめますと、カテゴリーAは遠洋、カテゴリーBは近海、カテゴリーCは沿海および沿岸、カテゴリーDは限定沿海、平水区域となるようです。

しかしながら、たとえカテゴリーAの船でありましても状況によって事故が起こってしまう事もあるでしょうし、逆にカテゴリーDの船であっても乗員の知識と経験によって前提とされた航行区域を超えて外洋にでる事も可能でしょう。結局、オーナーの皆様に求められるのは自分の実力と船の特性を理解し、出航するしないの判断も含めよく考え適切に対処していく事ではないでしょうか?

追記:ISO12217-2では、復元力消失角以外にもSTIX(stability index)と呼ばれます計算式群があり、いろいろな観点から評価し総合的に対象ヨットがどれほどの耐航性能を有するのかを判断できます。こちらはまた別の機会に紹介したいと思います。


ロングキール艇 [ヨットデザイン]

こんにちはひさびさのブログふなだいくです。

このブログ『よっとでざいなーへの道』という題を付けているにも関わらず、ほとんどヨットデザインに関する記事が無いという事に気付いて、なんとなく投稿してみます。

実はもう一つのブログからの使い回しσ(TεT;)

日本では今ひとつ人気の薄いロングキール。

73




















72スタン


















こちらでは結構な頻度で目にします。

66


















66スタン


















個人的にはロングキー艇が好きなのですが、今日はなぜロングキール艇が好まれないのかその理由について考えると共に、愛好家のための弁明として見た目以外(見た目は個々人のセンスの問題なので)でロングキール艇の良さについて考えてみたいと思います。

まずは嫌われる理由ですが、同じようなサイズの船に比べてロングキール艇は
1, 上り角度が悪いという事を含めた遅さ
2, 船内が狭い
3, 舵効きがわるい(特にアスターン時)
主な理由はこんな所でしょうか?

1,ですが、同サイズの軽排水量艇に比べると圧倒的に重いのと、水線下の水に接している面積が多いので、これはまぁどうしようもありませんね。レースされる方は別として、何艇かでクルージングに出かけるときは確かに不便でしょうが、単独での航海の場合は艇速にみあった計画をたてれば問題ないでしょう。

2, 船内が狭いのは、ハルがキールと一体になっている形状により、水線レベルのビームが同サイズ艇のそれと比べて小さい事が原因でしょう。しかしこれは後に述べます乗り心地にいい影響をもたらします。

3, 排水量以外に舵効きが悪い主な原因は、ロングキールが横方向の動き(回転)に対して抵抗を作る事と、ラダーがキールの続きにありラダー軸位置がラダーの前縁にあるいわゆるアンバランスドラダー(注1)であるという事では無いでしょうか。特に後進する時はプロペラをまわしているとかなり舵効きが悪いですね。しかし、ラダーをまっすぐにしたまま艇速をつけて、それから舵を切るとうまく転回してくれます。
(注1)アンバランスドラダーに対してバランスドラダーというのは、ラダー軸が前縁から1/3程後ろに位置します。また機会があれば詳しく紹介したいと思います。

対してロングキール艇の良さは
1, 軽排水量艇にくらべて悪天候での安心感がある
2, 帆走時の乗り心地がいい

理由についてお話させていただく前に少しこちらを

復元

















L Larsson and R E Eliasson (2000) 'Principles of Yacht Desing' 2nd edt.

これは復元力曲線といわれる物で、ヒール角度に対して復元力のてこの長さをグラフにしています。実際の復元力はそれぞれの値に排水量を掛けて求められます。
復元力は重心と浮心の位置の違いによって発生します。少ないヒール角度では、浮心の位置つまりハルの形状が大きな作用をもち、大きいヒール角度では重心の位置が主な要素となります。

したがって比較的重心位置の低いロングキール艇は軽排水量艇のそれにくらべて、正の復元力(グラフではx軸の上側)を発生する範囲(stability range)が多くなります。たとえば、ロングキール艇では範囲が0°~150°、対して軽排水量艇は0°~130°など。復元力が0になる角度を復元力消失角(angle of vanishing stability)と言います。

ここで、ロングキール艇のような重排水量艇と軽排水量艇の復元力曲線(<90°)を見比べてみたいとおもいます。

復元比較
























D Cannell and J Leather (1976) 'Modern Development in Yacht Design'

Aはロングキール艇のもので、Bが軽排水量艇のそれです。

Bは少ないヒール角度でもAに比べて比較的大きい復元力を発生します。(注2)
これはAにくらべてBが小さなヒール角度で浮心が大きく移動するためです。これは感覚的にも理解しやすいかと思うのですが。たとえば、カヌーなどの細身の船体とゴムボートのような平べったいものを比べると、カヌーの方が圧倒的に不安定ですよね。

(注2)実際にはてこの長さに排水量がかかるので、重排水量艇の方が復元力は大きいのですが、復元するのに必要な力は排水量に比例する、つまり重いの分だけ大きい力を必要としますので、クルーが体感する復元力(正確には復元力てこの長さ)はグラフの通りBの方が大きくなります。

この事がノリ心地のどう影響するかと申しますと、船が波などで突発的な横方向の傾き(< 50°)を受けた時に、Bの方が復元力が高いため早くもとに戻ろうとします。そして、今度は反対側に傾き結果的に継続的にロールが発生し、それが収束するまで一定の時間を必要とします。
対してロングキール艇では、軽排水量艇よりも復元力が少ない為に比較的にゆっくり復元し、ロールの周期も長く、体感的には柔らかいモーションを作り出します。そして、ロングキールがブレーキの役割を果たしロールも早く収束します。
まとめますと、軽排水量艇のほうが、横揺れ方向の加速度が短い時間に大きく変化し、収束するまでに長い時間を要します。
この加速度の変化が大きい程、人間は不快感を感じるといわれています。
これが、ロングキール艇の方がノリ心地がいい原因では無いでしょうか。

もう一度、復元力のグラフ(一枚目)を見て頂きたいのですが、この図では60°までは艇がヒールすればそれにともなって復元力も増していき、つまり体感的にはヒールすればする程、同じ力(ヒールモーメント)がかかっている限りそれ以上傾かないように感じます。しかし、60°を超えると復元力は減少し始め、ヒールモーメントが減少(風が弱まる等)しない限り転覆する方向に向かいます。ディンギーに乗られてる方は経験があるかと思いますが、この角度というのは実際に体感でき大変怖いものですよね。

次に復元力の比較グラフ(二枚目)ではヒール角度が50°を超えた付近からロングキール艇の方が大きい復元力を発生していますね。そして、復元力が減少に転ずる角度もロングキール艇の方が大きいのが見て取れます。これがロングキール艇の悪天候下での安心感に繋がり、実際により安全な帆走が可能になります。

長くなってしまいましたが、まとめますと復元力の観点からみたロングキール艇の良さは、そのモーションの柔らかさと最大復元力が発生する角度と復元力消失角が大きい事に起因する安全性にあるように思われます。

クラッシク















どのようにヨットと付き合っていくかによって、自分の乗るヨット選びは変わってくるかと思いますが、自分の船の特徴と限界を知るのは大事な事ではないでしょうか?

ふなだいくでした。

故きを温ね新しきを知る [ヨットデザイン]

こんにちは小さなことからコツコツとふなだいくです。

ヨットの世界だけでなく、私たちの身の回りのものは、私たち自身もふくめ時間をかけて進化(もしくは発展)してきました。

分かりやすいもので言えば車、現在でこそあの形ですが現在の姿に至るまでには、いろいろな思考錯誤があったはずです。

しかし、現在の姿があたまに焼き付いている私たちでも、車の機能ひとつひとつを理解しようとするとき、『なぜこの部分ががこの形(もしくは仕組み)でないといけないのか?』という問いに答えるのは容易くないのでは無いでしょうか?←私だけかも?

その問いにスムーズに答えるためには、先人たちの礎をかえりみてみるのが分かりやすいのではないでしょうか。

先日の記事『半漁船?』でも紹介しました"Seaworthiness 'Forgotten Factor'"よりヨットの形の移り変わりについて話をしてみたいと思います。

profile←クリック拡大

こちらは、ヨットを横から見た図なのですが、その形の変化が分かりやすくイラストされています。

しかし、先ほども言いましたように、このそれぞれの進化の段階には理由があるはずなのです。

どの分野でもそうですが、常にリーディングエッジをいくカテゴリーというのはレース用のものです。そして、その技術が汎用におりてきます。

したがって、レースのレーティング基準(計算式によって導かれるハンディキャップのようなもの)によって常にレース艇の設計、最終的には汎用のヨットデザインに、良くも悪くも影響を及ぼしてきました。

時には、レーティングに有利になるために、わざと不自然な船形にする場合もありましたが、今回は船を速くするためにおこった船形の移り変わり、つまり現在でも受け入れられている考え方を紹介します。



midiship←クリックでドンッと拡大

このイラストは、19世紀後半の船のBody plan (断面図)です。

1886年までのルールでは、レーティングに影響を及ぼすファクターはL(船の長さ)とB(幅)だけでしたので、船形は細長くなり、幅が狭くなったことにより減少するRighting moment (船が傾いた時に起き上がろうとする力)を補う為にD(深さ)を大きくし船の重心を下げようとしました。

その結果、図中央A右端の船のように、まるで『茶柱が立っている』かのような船形になりました。

これは極端な例ですが、この重心を下げるというアイディアは、バルブキールのような例で現在でも支持されています。

1886年よりルールが変わり、SA(セール面積)とL(長さ)がレーティングの要素になったことにより、無駄にRighting momentを得る必要がなくなって、今度は接水面積を減らすことによってDrag(抵抗)を減らす努力がなされました。

その考えに則って、B(幅)は広くなり船の深さは浅くなっていき、前方のキールをカットするのが流行ったようです。

この考えは、現在の船形(一枚目のイラスト一番下)をみれば分かるように、今では最も重要な考えのひとつです。

しかし、この頃は現在のように実験、予測の理論が確立されていませんので、こういった発展はおおかたTry and errorによるものだったようです。

ですから、行き過ぎ、やり過ぎのデザインで、『あるところは良くなったが違うところで弊害がでる』ということも多々あったようです。



以上、今日のチラシの裏。っと(微笑)


ふなだいくでした。

半魚船? [ヨットデザイン]

こんにちはいつまでも少年のようなまっさらな気持ちを持っていたいふなだいくです。


Seaworthiness: The Forgotten Factor

この本を読んでまして、頭の中で渦巻いているいろんな考えを整理する為に、記事を書き出したのですがバリッと理系なもので、巧くまとめられなかったので、この本の中から『おもしろいな』と思った所を紹介したいと思います。

エリザベス朝ガリオン船





















これは、16世紀の著名な船大工(わたしではありません。ふなだいく違い)によって描かれたエリザベス朝時代のガリオン船です。

上の方の絵を見てみると、船体下部(水線下)に魚が描かれています。

このデザインは『What is good for fish should be good for ship.』という仮説の元に考案されました。

つまり、その船型は船体前部に最大幅が位置し、そこからなだらかに中心線に収束していきます。

この本によると、鱈(タラ)の頭と鯖の尾部のコンビネーションがイメージだそうです。

たしかにローマの哲学者、Marcus Cicero も

Those things are better which are perfected by Nature than those which are finished by art.

と言っていますが、このデザインの場合致命的な間違いがあったようです。

それは、↓反転でドン!


魚は水の中を進むのに対して、船は水の上をいく。


まあ詳しい事は流体力学の話なので省略しますが、つまり適応する自然法則が違うもんなんですね。

しかし、今でこそ色々な現象がモデル化されたり、データの蓄積によってこれが間違った理論であるというのは容易に理解されますが、根拠のない(全くない訳ではありませんが、実証されていない)仮説と経験則が支配的であった時代は、航海から戻ってくるという事が(長期航海を目的とした船の場合)、『その船が優れた船』である事の指標であったのではないでしょうか。

実際、このアイディアは19世紀後半まで支持されていたようです。

いやー、まさに古き良き時代。





最後になんなんですが、土曜日にセーリングから帰ってきた後料理したんですが、あまりにも美味しそうだったので見てやって下さい。

チリコーンライス&Chips
Chili cone carne on rice & chips


ご飯の上にもチーズをかけて、激ウマでした。
皆さんも作ってみるべし。







ふなだいくでした。

うみ、なみをあげず [ヨットデザイン]

こんにちはものすごく平和な毎日を過ごしておりますふなだいくです。

先日のエントリーでもチラッと出てきたんですが、履修科目の一つMARN217 Naval architecture の課題『Stability and buoyancy regulations for recreational sailing craft』の為に資料集めをしていました。

Regulation(規則)と言えば、ISO(Intenational Organization for Standarditation)ですね。

で、このISOの発行しているドキュメントの中から資料になりそうな物を探していると、、、、有りました。

ISO 12217-2 Small Craft - Stability and buoyancy assessment and categorization -- Part 2: Sailing boats of hull length greater than or equal to 6 m

で、図書館にコピーが有るのではと思い、ポータル(学生、職員用のイトラネット窓口)より、我が大学が誇る所蔵図書検索システム『ボイジャー』で調べて、ある事を確認して図書館に向かったにも関わらず、、、


無いんです。有るべき場所以外の棚も探したんですがどうしても見つからず困っていました。

まあ99%、どっかの『紳士でない』イギリス人がその辺にほったらかしてるか、ギッて帰ったんでしょうけど。。。(こういう関係書類はリファレンスのみで持ち出し禁止)

しかし、あきらめの悪いふなだいくは、RINA(Royal Institute of Naval Architect)のサイトのアクセスし、このISOドキュメントに関する論文を発見しました。

で、ちらっと読んでみて心に留まった事を、覚え書きのようにここでお話させて下さい。

ISO12217-2の取り決めの中でも、モノハル(ハルが一つの物)とマルチハル(カタマランやトライマラン)で基準も変わったくるようなのですが、今日はモノハルに限って話を進めたいと思います。

このドキュメントのタイトルにあったように、この基準に沿って作られたヨットは4つのカテゴリー(Category A~D)に分類されます。

で、どのように部類するのかというと

  1. Angle of varnishing stability(復元力消失角)
  2. Down-flooding angle(海水流入角)
  3. STIX- Stability index
1の復元力消失角というのは、平たく言うと『これ以上傾いたら、船がひっくり返るよ』ということです。

2なんですが、おおかたどのヨット(全長6m以上)にもコンパニオンウェイといって、船内への入り口が有りますよね。この海水流入角というのは『ある角度になった時にコンパニオンウェイから水が入ってくる』その角度の事です。

で、最後のSTIX。これは簡単にいうと、そのヨットの安定性、安全性の高さの指標のようです。

まあ、このISO12217-2を作成する際にいろいろな国が集まって、まあいろいろな事を主張する訳ですわ。

ちなみに日本も参加していて、結構頑張ったらしいです。

で、困ったお偉いさんは出来るだけ色んな国の主張を取り入れる為に、8つからなる指標の総合点でカテゴーリ分けをするこのSTIXを発明したようです。

今回のレポートではこのSTIXがメインの題材になりそうです。

レポートを分かりやすくする為に、去年課題でデザインしたヨットをモデルにこのSTIXを出してみようかと思っているのですが、その為には艇の装備品、重量計算などやらなければいけない事が山積み。。。


自分で選んだ道。さあ、がんばろう。

以上、今日のチラシの裏っと。。。

ふなだいくでした。

すぎたるはおよばざるがごとし [ヨットデザイン]

こんにちはどうやら振られたらしいふなだいくです。

皆さん、インターナショナルモスなるディンギーのクラスを耳にした事がありますか?

これ↓

モス





















ええ、浮いてますよ。空中にね。

バリッと高速インターネットの方は是非こちら↓のビデオクリップを見て下さい。(11MBと激重ですが)
蝶のように舞い、蜂のように刺す(モス級ビデオクリップ)

ええ、まさしくモスの名に恥じないぐらい舞っています。


このデザインのコンセプトと言いましょうか、なぜ水面からハル(船体の器の部分)を浮かしているのかというと、この方が接水面積が減る→その分、dragつまり抗力(船を後ろ向きに引っ張る力、抵抗)が減る→速い→うひょ~、となる訳です。

で、どうやって浮かしているのかと言うと、写真の真ん中にセンターボード(ブルーの板)の最下部に飛行機の翼のようなものがついていまして、コイツが揚力(上に持ち上げる力)を発生し、船が浮く訳です。

まあ、細かい事を話していると夜が開けそうなので、興味がある人はモスのクラス協会(UK)を覗いてみて下さい。

International Moth Class Assosiation(UK)


なぜモスの話がでてきたかと申しますと、先日のエントリーのなかで履修科目のMST212より課題が与えられているという話がありました。

で、そのコースワークの全貌を紹介しようと思いまして。

またまた原文をそのまま載せてしまいます。

Course Work A – Foil and Sail Design for High Speed Craft.

A foil borne, conventional sail (ie. non-kite) entry in the A Class (sail area 10 – 13.93 m2), half kilometre course category under WSSRC rules is being considered. You are required to present your design for the lift foils and the sail(s) for a craft capable of challenging for the sailing speed record.

The submission should include:
Key dimensions and configuration of the sail(s).
Configuration, key dimensions and outline strength calculations for the foils.
An estimate of speed achievable.
A report giving an explanation of the design process, and a critical analysis of your design, including any assumptions made.

ええと、海の上を走る乗り物で一番速い奴はどのボートだ?という日本で言うと鳥人間コンテストみたいなのが有るようで、そのなかでA Classと言うカテゴリに出場できる乗り物をデザインしろということです。

で、縛りとしては
  1. 水面からハルが浮くようなFoil(センターボードやラダー、時にはハル自体)を持ったもの
  2. 一般的なセールを持つもの(パラグライダーのようなものは無し)
  3. そのセール面積は10~13.93平方メートル
  4. コースは500mのいわゆる『いってこい』コース(直線)
とまあ、こんな感じです。

で、いろいろインターネットを見ているうちにだんだんやる気がなくなってきまして。

というのも

windspeed











こんなのや

sailrocket
Video clip















こんなん

longshot

Video clip(6.8Mb)













ましてや、こんなのを作らないと勝てないようです。

(;´ー`)┌

もはやヨットでは無いですよね。

一番下の奴なんて、頭の中を覗いてみたいぐらいに配色のセンスがいまいち君だと思うのは私だけでは無いはず。しかもこいつ、レコードホルダー。


まあ、ボチボチやります。

興味が有る方はそれぞれのウェブサイトを覗いてみて下され。

Macquarie Speed Sailing Team(一番上の写真)

SailRocket(真ん中)

Longshot & Hobie TriFoiler(いまいち君)

ふなだいくでした。

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