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艇速の違いによる接水面積と抵抗の関係の変化について [ヨットデザイン]

久々に記事を投稿しますふなだいくです。


レーサーの皆さんは、愛艇のボートスピードについてとても敏感であると思いますが、艇速アップの為に色々努力されておられるかと思います。

しかし、実際レースとなれば船体自体をどうこうする訳にはいきませんから、その時与えられたものの範囲で艇速アップを心がける訳です。
ハルが受ける抵抗を減らすというのは、レーサーにとって大きな課題かと思います。

レース経験のある方は誰もが通った道かと思いますが、艇の姿勢をかえたりと色々試されたと思います。
私自身も下級生時代は先輩に言われるがまま、前に乗ったり後に乗ったり、ヒールさせたりさせなかったりしておりました。
上級生になってからも、今ひとつ理屈は理解していませんでしたが、ボートスピードがあがる状態がある事は何となく感じていました。例えば微風時全般や中風以下の平水面でのクローズホールド(スナイプで言うとクルーがオンデッキになるぐらいでしょうか。だたしこれは私の場合つまり重量級ですので、軽いペアの場合はもう少し風が強い状態まで当てはまるかもしれません。)で、艇体を少しバウダウンのトリム(船体の前後の浮き具合)にして、接水面積を減らすなど。

当時は感覚でスピードが増えた減ったと感じておりましたが、この世界に入ってヨットについて勉強するうちに、色々と分ってきました。

今日はこのボートスピードの遅い時に接水面積を減らす効果についてお話したいと思います。


まずヨットがセーリング中に受ける抵抗は色々ありますが、ハルが水流からうける抵抗は大きく分けて二つあります。(正確にはもう少し種類がありますが)造波抵抗と摩擦抵抗です。

前者はヨットが水の上を航行する時に船首と船尾から下の図のように、上から見ると三角形の形をした波ができる時に発生する抵抗です。

造波抵抗














C.A. Marchaj

Sailing Theory and Practiceより引用しました。クリックで拡大します。


この抵抗は船体の形状に深く依存します。今回の本題からは少しずれるので、この造波抵抗は船体水線長の平方根が一秒当たりに艇が進む距離(艇速)に等しくなる辺りから急激に増加するという事だけ心に留めておいて下さい。

摩擦抵抗の方ですが、これは読んで字の如く、船体表面と水流が接する部分に発生する摩擦による抵抗です。
こちらは接水面積に比例します。つまりこれを減らす事は艇速アップに直結する訳です。
下の図は直立状態でのユNew York 32ユというヨットの抵抗を縦軸に、艇速を横軸に表したものです。


抵抗割合












C.A. Marchaj
Sailing Theory and Practiceより引用しました。
クリックで拡大します。



引用した本が結構な古典ですので、単位がメーター法ではなくインペリアルですが、同様の計算式が適応出来ますのでご容赦を。

実線がトータルの抵抗(Total Resist.)を示し、点線が摩擦抵抗(Friction)の分だけを示しています。そしてその差が造波抵抗(Wave making)になります。

さて、この図の一番下にユSpeed length ratioユと軸がありますが、これが先程造波抵抗のところでお話しした船体水線長の平方根と艇速の割合を示しています。

この割合が1.0の辺りから急激に造波抵抗が増加しており、それによって全体の抵抗に占める摩擦抵抗の割合が減少しているのがお分かりかと思います。

つまり、このポイント以下の艇速では接水面積を減らす事はとても効果的に全体の抵抗を減らす事になる訳です。

逆 にもっと艇速の早い領域では、節水面積を減らす事は艇速アップに対しあまり効果がなく、それ以外に意識を注ぐべき事柄、例えばディンギーやレーサーヨット であれば逆にスタン近辺の平らなハル形状によって、プレーニング状態にもっていくとか、クローズホールドであれば波によって受ける船体のピッチングを減ら すとかでしょうか。


次回セーリングにいかれる際は、接水面積と艇速の関係に少しだけ意識を注いで乗ってみて下さい。このような理屈を意識しながらセーリングすると、もしかしたら艇速アップにつながるかもしれませんよ。


ふなだいく


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