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Falmouth working boat とかGaff rigについて [ヨットの話題]

今週末、私が住む街Falmouth(ファルマス)では、Falmouth Working Boat Championshipが開催されておりました。

詳しくは、Falmouthの情報サイト「the Packet」へ(クリックで移動)

 金曜土曜と用事があり日曜日こそは、どこかのボートに乗せてもらおうと期待していたのですが、朝起きてみると残念なことに凪。。。

こんな日にちょっと太目の自分を乗せてくれるところは無いだろうと諦め、ハウスメイト二人にカメラを託し、自分は岡の上から指をくわえて眺める。そんなちょっと切ない午後を過ごしました。

さて、彼らが帰ってきて写真をチェックしてみると。。。。

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DSCN1396.jpg

 まぁ、良いのですが。。。

彼らが乗っていた艇は、Falmouthいや世界で一番美しい(ローカルなクラスですから)と言われるFalmouth working boat(ファルマス・ワーキングボート)その名も「Stella(ステラ)」。

もっと自艇の写真を取って欲しかったのですが、レースに夢中でそんな暇は無かったということで諦めましょう。

 DSCN1386.jpg

左からハウスメイトのケリー、リギン屋のモーティー(ちなみに本名はピーター)、ヘルムの人は存じ上げません。右のメガネの彼がBoat bitchと呼ばれているバッシャー(なんでも叩いて壊す:バッシュする人という意味。本名はベンジャミン)です。

あともう一人は後ほど出てきます。

ワーキングボートはもともと牡蠣を獲る漁船として発展してきたヨットなもので、ご覧のとおりコクピットにはベンチもありません。

DSCN1394.jpg

しかもレース中はヘルムスマンの視界を確保するため、このような姿勢に。

海面とフリートの状況を常に見ていたい自分としては些か不満なのですが、それがこの艇のスタイルですから仕方ありません。

この写真で少し見えていますが、無骨な艇が多いこのクラスでチークデッキを施しているのはこの艇くらいでしょう。

DSCN1387.jpg

チークデッキですが、この狭いサイドデッキを立って移動することはほとんど無い(船への乗り降りくらい)ですし、フォアデッキもランニング時のウィスカーポールを支えておく↓くらいなんです。

DSCN1392.jpg

あ、彼がもう一人のハウスメイト、エディー(本名はジェームス)です。

彼は、つい最近までインド、ネパールを周りヒマラヤをトレッキングしてきたばかりなので、格好が少し中東っぽいですが、イギリス人いや彼が言うにはイギリス人ではなくウェリッシュ(イギリスの一部の地方ウェールズの人)だそうです。しかし、インドやネパールでは「それどこの国?」と聞かれ少し凹んで帰ってきました。

 

話がそれましたが、そろそろ本題に。

私はガフリグがとても好きでして、なぜかとても心惹かれるものを感じます。

もちろんセールにまつわる流体力学を勉強しましたので、バミューダンのようなアスペクト比(縦横比)の高いセールの方が流体力学的に「効率」は良いのは理解しています。

しかし、人々がヨットに求めるものというのは多様であり、またその用途や限界もさまざまです。

以前のエントリー「ガフカッターとバミューダン」でも話題にしましたが、ガフリグにはヨットの種類やセーリング角度によってそのすばらしい利点が活きてきます。

たとえば、

以前紹介したこのグラフ(少々難解)ですが、

"Sailing Theory and Prctice" C A Marchajより
3ea218bb.jpg

"Sailing Theory and Prctice" C A Marchajより

 

まずはこのグラフの見方のおさらいから。 

1、縦軸はセールが発生する揚力係数、横軸は抵抗係数。

補足:ここで係数というのは、面積辺りの無単位係数としてあらわしています。これによって面積が異なるセールを効率の意味で比べることが出来る。

2、グラフの各ライン上の角度αは、セール(ブームの中心線)と見かけの風がなす角です。たとえば、あるヨットが見かけの風に対して、35度でセーリングしているとします。そしてαが10度だとすると、進行方向に対してのブームの角度は25度ということになります。

3、そして、今グラフの原点に描かれているヨットと原点から各ラインのα=10度に向かって伸びている矢印線に注目してください。この矢印線は、セールが発生する揚力の大きさとヨットの進行方向に対する角度を表しています。そして、この矢印は二つの方向に分解することが出来て、ひとつはヨットの進行方向に対する力、つまり推進力にもうひとつは、進行方向に対して垂直、つまりヨットをヒールさせる力をあらわしていると言えます。

ここまでで分かったことは、たとえば、図の通りにヨットがセーリングしているとすると、α=10度のAR=6とAR=1/3のポイントを比べてみると、前者のほうが推進力もヒールさせる力も大きいことが分かります。

4、そして次に個々のラインを見ていきましょう。まず結論から。ここで何が分かるかというと、それぞれのアスペクト比での最適なα、つまりトリムアングルが分かります。AR=3のセールでα=15度と10度と5度のポイントを比べて見てください。それぞれ前述の方法で、推進力とヒールさせる力に分けると、5度のときヒールさせる力は最小で15度がもっともヒールさせる力が大きいですね。また、推進力はというと、5度の時が一番小さいことは自明ですが、10度と15度では後者の方がほんのわずかに高い推進力がありそうですが、あまり差が無いように見えます。つまり、そのときの風の強さによってヒールさせる力を受けれるようなら、ブームを沢山引き込めば良いということです。

さて、今まではヨットの進行方向がクローズホールドの場合を見てきましたが、ヨットが見かけの風に対してアビームの場合はどうでしょうか。今度はAR=6とわれらがガフリグAR=1を比べて見ましょう。不器用な図で申し訳ありませんが、ちょっと書き込んでみました。

90.JPG

基本的な見方は同じですが、ヨットの進行方向が上向き(見かけの風に対して90°)なのに注意してください。

さて、この場合に前述の二つのセールの最適なαを探すとそれぞれ15度と38度になることが分かります。そして、それぞれの推進力を比べてみますと、われらがガフリグの方が20%近く大きい事がわかります。(そのかわりヒールさせる力は4倍以上ですが。) 

つまり、ガフリグはバミューダンリグと比べて、より重たいヨットを同じスピードで走らせる事が出来ます。(もちろん、いくつかの仮定の下ですが。ここではややこしくなるので、またの機会に。)

すばらしいですね。

Falmouth working boatのように、牡蠣とり(底引き)船 には、ぴったりなわけですね。

また、それだけでなく色々装備をつんで排水量の大きなクルージングヨットの場合でも、実はガフリグの方があっているという訳です。

しかし、ガフリグはバミューダンと比べて扱いに慣れていないとちょっと手が出にくいですね。そこで、本当はこのエントリーでガフリグの各部位の説明やトリムについて、お話したかったのですが、長くなってしまいましたので、続きは次回とさせてください。

 

航祐



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